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最終更新2001.6.12

サンゴ礁とはサンゴをはじめとする石灰質を分泌する生物が作る特徴的な地形の名称である.造礁サンゴ類をはじめとする生物遺骸が堆積してできた海底の高まりで,この高まりが防波堤のように波に対抗できるまでに発達した地形のことを言う.

サンゴ礁を作るサンゴは分類学上,クラゲやイソギンチャクに近い.ポリプの大きさは数mmから数cmで,刺胞動物門に属する.触手の先に刺胞を持ち,敵やえさなどを攻撃する.口,消化管,筋肉,触手などからなるごく簡単な構造を持っている.夜間には口の周囲にある触手で動物プランクトンを捕まえて腔腸に引き入れて食べる.また,ポリプ内の細胞に渦鞭毛藻類の褐虫藻を共生させており,褐虫藻の光合成産物に大きく依存して生活している.サンゴの多くは群体性で,小さなポリプが集まってコロニーを形成している.中にはクサビライシなど,単体で生活するものもある.

サンゴは体内で炭酸カルシウム(CaCO3)を分泌して海底の基盤に固着し,その上に固い骨格を形成しながら成長している.造礁サンゴが生育するのに適している海域は日光が十分に届く,塩分濃度3.4%~3.6%,水温25℃~29℃,水深20~30m以浅である.また,酸素やえさとなるプランクトンが十分にあり,清澄な水で,海底もシルトなどが堆積していないことも大切である.

サンゴ礁とサンゴの分布

現在のサンゴ礁は緯度にして南北30°以内の海域に分布している.サンゴ礁の成立には温度が大きく関係しているため,この緯度内でも寒流が流れ込む海域では発達が悪い.また,陸から大量の土砂が流れ込む海域でも発達が悪い.サンゴ礁は海水が温暖な域に分布し,冬季の海水温が18℃の線と分布限界はほぼ一致している.

日本においてのサンゴ礁の分布域は鹿児島県トカラ列島以南から沖縄にかけての南西諸島,および東京都の小笠原諸島以南である.南西諸島では,北緯30°以北にも分布しているが,これは黒潮による影響である.また,サンゴ礁を形成するまでには至らない造礁性サンゴの生息北限は千葉県野島崎沖付近である.

サンゴと共生藻

サンゴは,直接動物プランクトンを摂取するほかに,共生藻(褐虫藻)をもち,その光合成産物(アミノ酸など)を栄養としていある.サンゴは自ら捕食する動物プランクトンだけでは栄養が不足で,共生藻の光合成産物に非常に大きく依存している.

このため,なんらかの原因で褐虫藻がダメージを受けたり,十分に働かなくなると宿主であるサンゴの栄養状態も悪化し,死亡にいたることもある.

サンゴ礁を取り巻く諸問題

サンゴ礁の海は多様な生物の生活場所になっている.サンゴはその複雑な枝の構造などから,魚の隠れ場,餌場,などの生活場所になる.また,サンゴ自体もサンゴポリプ食性の魚のえさとなる.サンゴを中心とした生態系が調和を保ちながら生育しているのである.その生物の多様性,1次生産力の高さから,"海の熱帯林"とも形容される.ひとたびこのバランスが崩れるとなかなか元に戻らない.そのサンゴ礁生態系を撹乱する要因として土砂流出,サンゴを食するオニヒトデの大量発生,異常高温での白化現象が報告されている.