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最終更新2001.6.12

マングローブとは
熱帯から亜熱帯の河口の湿地帯や沿岸部の干潟に生育する、潮汐によって海水に浸かる森林植生をさす。マングローブはある1つの種名を表すものではなく、森林植生全体を指す。マングローブをつくる樹種は、海水にさらされる、軟弱な地盤に生育するといった植物にはきびしい環境に育つ。このような環境で生活し、繁殖するための他の植物には見られない特殊な形状や機能をもっている。

マングローブの特徴

耐塩性(塩排斥機能)
 マングローブは普通の植物が生育できないような高い濃度の塩水につかっている。このため、マングローブを構成する種はその種によって次のようないずれかの塩排斥機能を持っている。
1. 葉にある塩類腺から塩分を排泄
2. 塩分をろ過するもの
3. 体内が多汁質であり塩分を薄めるもの
4. 塩分を古い葉に集めて、その葉を落とすもの

胎生種子
マングローブが生活する環境では、普通の種子を作ったのでは海洋を漂い、発芽力がなくなるか、水に沈んで発芽しても酸素がないため成長できない。つまり、次の世代を残すことはできない。マングローブの主な種は母樹に種がくっついている時点で発芽させ、この芽に栄養を送る。このような種子を胎生種子という。胎生種子は細長く成長しやがて落下する。泥にささって定着するか、水で散布され、根などに絡まり安定し、発根をはじめる。

←ヤエヤマヒルギの胎生種子.スケールは1目盛10cm.
(2000.8石垣島 吹通川)

胎生種子が泥にささって双葉が出ている状況.
(2000.8石垣島 吹通川)

根の特殊な形状・機能
植物は根でも呼吸している。水中のシルト中では酸素を取り込めないので、干潮時に酸素を取り込んでおく必要がある。支柱根、膝根、呼吸根などのこれらの根はそのような空気をためておく役目も果たす。また、軟弱なシルトなどの上に成立するため、大きな体を支える工夫がいる。このため、たこの足のようなを発達させたとも考えられる。

(2000.2石垣島 宮良川)

マングローブの種類・分布
世界に約90種類が知られ、このうちヒルギ科、クマツヅラ科、マヤプシキ科の3科で50%以上のマングローブの種類を占める。日本には6種が分布している。西表島ではこの6種全部がみられ、日本の北限の鹿児島県喜入町ではメヒルギだけがみられ、天然記念物に指定されている。

インドネシアでは高さが40mの達するものがあるが、日本では高いもので7m程度である。一般的には、亜熱帯から熱帯の割合大きな島で、陸地から土壌が河川等によって供給されやすく、しかも後背地がゆるやかな地域である。こうした地域ではマングローブ林に泥土が堆積し、海に向かって陸化が進んでいる。

マングローブの生態系
マングローブ生態系では樹木が主な生産者であり、その落ち葉など葉直接植食性のカニ類やキバウミニナが食べる。そのふんは巻貝類、カニ類、エビ類に食べられたり、分解者に分解され栄養塩類となって水に溶ける。植食性の小動物は肉食性の魚類や甲殻類に、さらにこれらの動物はより大型の肉食魚介類に食べられる。マングローブの生態系はサンゴ礁のそれとともにバランスを保っているのである。

沖縄で見られる代表的なもの

ヒルギ科 メヒルギ 鹿児島湾、種子島以南

ヒルギ科 オヒルギ 奄美大島以南

ヒルギ科 ヤエヤマヒルギ 沖縄島以南

クマツヅラ科 ヒルギダマシ 宮古島以南

シクンシ科 ヒルギモドキ 沖縄島以南

マヤプシキ科 マヤプシキ (ハマザクロ) 石垣島以南