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最終更新2001.6.12

小さな離島では水を得るのが困難な場合が多い。宮古島では地質構造が表面はほとんど透水性の琉球石灰岩が覆っており、その上にうすい土壌がのる。透水性の琉球石灰岩の下には不透水性の島尻粘土層がある。宮古島では降った雨の50%が強い日差しにより蒸発散、透水性の地質により、地下流出が40%をしめ、地表流出はわずか10%である。全国平均と大きく異なることが分かる。

  蒸発散 地下流出 地表流出 その他
宮古島 50 % 40 10 0
全国平均 36 4.5 55 4.5

ここ宮古島は年間降水量2200mmと多雨だが、そのほとんどは梅雨と台風によってもたらされる。台風の少ない年は干ばつに見舞われることになる。その降水の40%は直ちに地下へ流出し、地下水となり海へと流出してしまう。

昭和46年の大干ばつを受け、この事業がスタート。宮古島の地質は地下ダムにちょうど良かったのである。不透水性の島尻層が断層により、ちょうどよい谷地形を呈している。その谷の地下水流の下流部をコンクリートにより締め切り、地下水をためるのである。島尻層の上には透水性の琉球石灰岩が乗っているのだから、地下水はその石灰岩の間隙にたまるのだ。この石灰岩は固いスポンジを連想してもらえば良いだろう。水をたくさん含むことができるのだ。地面を見る限りでは、この下に水がたまっているとか、この下にダムの止水壁があるだとかはまったくわからない。止水壁も、穴を掘り、セメントを流し込むという工法だ。これを細長く連続させて地下に止水壁をつくる。地表が水に浸かってしまうという従来のダムとは全く異なるものである。その地下にたまった水をポンプでくみ上げ、農業用水に利用している。宮古島と来間島に送水されている。スプリンクラーを利用して散水するようにあわせてほ場整備も行われている。

実験的に建設された皆福ダムと砂川、福里の2つのダムが宮古島にあり、農業用水として利用されている。沖縄県内では他にもいくつかの島で計画がある。

地下の硝酸態窒素濃度が一時期問題になったが、下水道の整備、肥料使用量の抑制などにより、現在は横ばいの状態である。自分たちが出した排水も地下にしみ込むと結局自分たちに影響するのだから、意識が高まるのは当然といえよう。