トップページ自然と環境赤土流出問題
最終更新2001.6.12

降雨により侵食された土砂が海に流出することで,沖縄で深刻な問題になっている.有機物が少ない侵食されやすい土壌,急傾斜などの地形条件,スコール的な激しい降雨が多いことなどの要因が流出をおきやすくしていると考えられる.

粘土は淡水に拡散するとμm単位の微小な粒子となって浮遊し,粒子表面は+,表面内部は-の荷電となる.このため,各粒子は反発しあい,大きな粒子にまとまることはない.淡水では沈砂地では容易には沈殿しないのである.しかし,海水に触れると,粘土粒子の表面の一部が解離されて,急速に塊が大きくなる.そのため,沈殿するのである.河口付近に粘土粒子は堆積することとなる.

土壌流出がおき,サンゴ礁の海域に土砂が流入すると,透明度が著しく悪化する.このため,サンゴの生育に必要不可欠な光が届かなくなり,サンゴの栄養状態が悪くなったり,サンゴの上に直接粘土やシルトが堆積し,サンゴ死亡することとなる.サンゴ礁海域では地形上,礁嶺の内側の礁池に赤土が溜まりやすく,外洋に拡散しにくい.

赤土の何がサンゴの何に悪影響を与えるのかはまだあまりよくわかっていない.今後の研究が待たれるところである.サンゴの種によって赤土耐性が異なることが報告されている.

沖縄県は1995年に赤土等流出防止条例を制定した.条例の概要は次のようである.

・ 1000㎡以上の土地改変工事を伴う事業行為は知事への届け出が必要.
・ そのうち,3000㎡未満のものについては保健所で審査をおこない,それ以上のものについては県庁で審査を行う.
・ 防止対策が十分でないものについては,計画の変更等を求める.
・ 虚偽の届出や無届出は罰せられる.

具体的に,次のような対策が課せられる.

1. 発生源対策
・ 工事によってできた裸地面を速やかに緑化,砂利の敷き詰め,暖流化剤の散布などによって,裸地をなくすか,ブルーシート被覆,ローラー転圧などの裸地面の物理的な安定度を高めること.これで,濁水の発生をできるだけ少なくする.

2. 流出濁水対策
・ 等高線に平行に小堤や横断水路を設置し,流出濁水の勢いを抑制し,分断し,水路などによって最終沈殿池まで導く.また,工事区域外からの雨水が濁水に混入してその量が増えないように現場周辺に切り回し水路を設ける.

3. 濁水最終処理対策
・ 濁水を貯留し,沈殿やろ過などにより,基準値以下の浮遊物質量で公共水域へ放流する.裸地1000㎡につき150?以上の沈殿地容積を確保する必要がある.放流基準は浮遊物質量200mg/l以下である.

また,農家にも表土剥ぎ取りによるパイン畑の更新,農地開墾等には届出が必要である.農地の管理に関しても畑の周りにあぜや緑地帯を設けたり,ススキなどの四季草で畑面を覆うなど,赤土が流出しないように工夫することが呼びかけられている.

石垣島からの報告です.撮影2000.2.21-24

1-1 葉タバコを栽培しています。
1-2 道路と畑の間に何の緩衝帯もないため、強い雨が降ると、土壌はすぐに道路に流出します。

大雨時の状況は,(写真2-1,2-2,2-3).
1-3 こちらは、パイン畑。パインの缶詰工場がなくなってしまったため、現在は生食用のパインを栽培しています。

傾斜にそって、ガリーができています。大雨が降ると侵食が続く可能性があります。
1-4 野底付近.
こちらはさとうきび畑です。沈砂池があります。ところが、赤土のような非常に細かい粒子で懸濁した水はただそのままにしていてもほとんど沈殿しません。

この沈砂池が満水になるまでは赤土の流出を抑えられますが、満水になってオーバーフローすれば直ちに海へと流れていくでしょう。
1-5 野底付近.
こちらは、なんかの工事の途中ですが、丘の上です。いかにも流出しそうです。
1-6 轟川河口付近の海岸です。手で砂をかき混ぜてみると、泥でにごりました。川から粘土やシルトが運搬されてきているのでしょう。

石垣島からの報告です.畑や工事現場からの赤土流出は,川を流れ海に達し,サンゴなどの海洋生物に悪影響をもたらします.その実態をレポートしました.撮影2000.8.1

2-1
2000.8.1
大雨の時,畑から赤土で濁った水が流出します.写真1-1,1-2と同じ地点です.
2-2 その流れは道路を流れ,谷に達し,川に流れ込みます.
2-3 かなりの急流です.